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大賞

装う家

田村 翔

芝浦工業大学 大学院 工学研究科 建築工学

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この住宅は「豪華さ」のある住宅ではなく、主人の訪問者に対する「装い」を空間化したものである。敷地は出来るだけ一般的な住宅地のほうが良い。この住宅は暗く長い廊下と、二つの舞台があるだけだ。特別高価なものも貴重なものも存在しない。ただ少し普通と違っているのは、訪問者の立場で設計されていることである。つまり、訪問者へ豪邸を「装う家」なのである。この家には部屋と呼ばれるものは一つしかないが、もともと住宅としてあったものを書割化することで無数に部屋があるように装う。時にその部屋は、絵画のギャラリーであり、大広間であり、庭園であり、プールサイドの一室である。主人たちはたとえ、かつて住宅としてあったものが機能しなくなっても必死に「装う」のである。それは「装い」を怠ったときに豪邸ではなくなるからだ。私が描きたかったのは、そんな主人の「見栄」であり、それに押しつぶされそうな「生活」である。

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