審査講評

テーマ:「未来のパブリックスペース」

審査員/西沢 立衛 氏

さまざまな興味深い案が提示されて、選出に苦労した。
まず1等賞の土田案は、白いお餅のような雲のような、不思議な存在を街中に作り、それを人々の共有空間とした。のびのびとして、スケールが大きく、全応募案の中で一番惹かれた案であった。しかし同時に、一番ケチもつけたくなった案でもあった。絵本を読める休憩所というアイデアは素晴らしいが、課題としては新しい公共空間を考えてほしいという思いがあったこともあり、既知の機能に限定するよりは、どう使われるかわからないような未知の機能への開放性を示してほしかった。また、メンブレインという素材の提案も、提案が持つ想像力の広がりに比して多少具体的すぎるように感じられた。しかしそれでもなお、美しいドローイングが示す世界はたいへん自然で、スケールの大きさを感じさせ、どのような使い方をも超越するようなモノのあり方を感じさせた。

2等賞福原案は、ガソリンスタンドというビルディングタイプが持っている、あきれるような開放性を利用して、自動車廃止後の時代にふさわしい公共空間を提案したものである。一見現実的な雰囲気の、既にあるものなんだから使っていこうじゃないかという、即物的でドライな発想に魅力がある。他方で、黙示録的な未来描写によって、やはりこれは現実というよりは夢の提案になっているという、不思議にねじれた案であった。

同2等賞上田・濱本案は、鋭く重い実線で引かれた地図上の国境線を点線にしてしまうことで、文字通り国境に風穴が開いてしまうという、ばかばかしいくらい図式的な案。国家崩壊の風穴をある種のパブリックスペースと捉えていて、テロリズム的かつアナーキズム的視点によって、既存の公共空間と異質なものを提示した。

同2等賞河野・佐藤案は、シュリンキングシティにおける公共空間の提案で、空室化した上層階をつなげて建築群としての公共空間を作り出すというもの。公共空間が空中に出来ていくという逆転的な提案である。このような深刻な都市風景だが、本人はゲーム感覚というか、かなりドライに捉えている。組み合わせのおもしろさだけでなく、それが何なのか、新しい公共空間とは何か、もう少し説明してもらえると魅力が増したと思う。

3等賞古賀・速水案は、旧浄水場を建て替えて人々に開放する案で、たいへん素直で好感の持てる案だ。やっていることが大胆な割には、新しい公共空間という印象はあまりなく、どちらかというと昔ながらの公共空間という印象もあったのが惜しい。

3等賞柏木・岡崎案は、郵便局の配送システムをベルトコンベアにする案で、失礼ながら思わず笑ってしまった。しかし、荒唐無稽ながら意外に現実的で、本人達も言うようにいろんな意味でウリといえる点が多い。ぜひ郵便局の人達に提案してみてはどうだろうか。

4等賞高橋・高野案は、移動する木々の提案で、単純ながらある鮮やかさを感じた。インスタントシティのように、突然現れて突然去ってゆくそのさまが印象的で、新しい公共空間が既存の町と対立せずに登場している。もう少し発展可能な案と感じた。

同4等賞田中・大橋・伊藤案は、低反発ウレタンフォームのような新素材を使って、公共空間の地面全体を作る案である。設定としては多少無理があるが、他人の痕跡だけが残ってその痕跡を介して他者を感じたり、沈みこんで一人になってしまったりと、人と人の人間関係に対する作者の興味を感じた。

同4等賞小沢・津田・坂間案は、郊外にありがちな屋外駐車場の巨大平面を使って、泉を作り出す案である。郊外を覆いつくすすべての駐車場がすべて鏡面状になっていくというアイデアで、郊外に広がる風景を何とかしようという問題意識に好感を持った。ただアイデアとして、多少単純すぎるような気もした。

同4等賞山本案は、都市の裏側みたいなところに、巨大な暗黒空間を作る提案である。シチュエーションは多少無理があるものの、ある種のリアリティを感じる。インターネット的なものから発想して建築空間に置き換えてみた、というような雰囲気がある点も魅力である。また、本課題の主旨を正面から捉えて、まっすぐ応えようとするその姿勢に感謝したい。

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