審査講評

テーマ:「超豪邸」

審査員/五十嵐 太郎 氏

超豪邸というテーマを思いついたきっかけはこうだ。

 コンペの課題を考えているとき、ある建築家の事務所において、海外の超豪邸のプロジェクトを見せていただき、途方もないプログラムとスケール感に圧倒されたからだ。おそらく、セキュリティの問題やクライアントの要望から、そうした住宅は完成しても、発表されないことが多いだろう。ゆえに、日本の建築雑誌を見ていると、そこそこの豪邸やがんばった狭小住宅ばかりになってしまう。こうした思考と現実の壁を越えることが、超豪邸のテーマである。また近年、卒業設計ブームというべき現象が起きていることから、学生の審査を行う機会が増えたのだが、何を想像してもよい場であるにもかかわらず、妙にこじんまりとしたリアリティに縛られる傾向が気になっていた。アイデア・コンペならではの問題設定を通じて、それもぶち壊したいと考えた。

 今回、大賞となった田村翔の「装う家」は、わかりやすい派手さがないために、初見では決まらなかった。応募作を20点以下に絞り込んだあたりから、その個性と密度がきわだってきた。必死に豪邸であることを装う住宅。その結果、長いアプローチと舞台装置だけが突出する。これは予想しなかったタイプの知的なアイロニーを含むプロジェクトだった。ポストモダンの時代のジョン・ヘイダックを連想したのだが、いずれにしろ最近の流行とは異なるデザインであることがユニークさにつながっている。
優秀賞の澤谷徳幸の「みえる光の路」は、発想の大転換を提案した。住宅そのもののはデザインしていない。普通でもいい。代わりに、そこから富士山を見るという特定の贅沢のために、金に糸目をつけず、障害となる構築物を排除する。家の図面がないずるい案、かもしれない。だが、くりぬかれたビルなど、それがもたらす異様な都市景観を想像すると、このアイデアは評価すべきだと思う。

 続いて、入選を見よう。皆川拓の目覚めの家は、世界一早い日の出を望むガラスの塔である。実は、今回の応募作でもっとも多いタイプが、敷地は小さいけれど、超高層になる塔型の住宅だった。一番ぶっとんでいるものとしては、月から地球に向かって、地表すれすれに塔がぶら下がる案もあった。そのなかで皆川案は、場所の選択がすばらしく、詩情にあふれる贅沢さを感じさせる。幸村雄太のガリバートンネルハウスは、縮小していくワン・ヴォリュームの住宅である。やはり長さを特徴とするアイデアは散見されたが、幸村案が所有物の大きさに注目したり、消失点の向こうにオチをつけた点を評価した。久保秀朗の即身成仏の家は、巨大な墓石にもなる僧侶の家である。ビルをまるごと住宅の部屋にするタイプの案が幾つかあったなかで、これはもっとも物語がよくできていた。

 佳作は、どこかひとつ抜き出ている案から選んだ。草ヶ谷友則の背景の家は、異常な部屋のプロポーションがもたらす空間の可能性が興味深い。木原圭崇の見せびらかす住宅は、多層のレイヤーによってモノを陳列することで、透明性と奥行きの概念に新しい展開を感じさせる。守行良晃は、社会批評としての超豪邸である。もっとも不気味な迫力をもつ案だった。今回、無数の小部屋が並ぶタイプの応募作は多く、もっと洗練されたデザインもあったが、斎藤隆太郎のLOCK HOUSEは鍵を使うことで、さまざまな展開への扉を開いた。
大平貴臣のX houseは、アンバランスな拡大という建築的な操作に転換した点が高く評価できる。ただ、課題の主旨から言えば、倍率をもっと無茶苦茶にした状態も提示して欲しい。川上赳の夢想の家は、人工的な鍾乳洞を発生させることで、5万年後に完成するかもしれない住宅である。言うまでもなく、もっとも長い時間のスパンを抱えた提案だった。なお、都市のなかに複数の部屋をばらばらに所有する今風のタイプの案も、少なからず見受けられたが、残念ながら入選に至るものがなかった。また逆に和風を批評的に再解釈する超豪邸案が、ひとつも存在しなかったことは印象に残った。

2021年(令和3年度)

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