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優秀賞

house torso

長谷 章臣

早稲田大学 大学院 理工学研究科 建築学

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図書館で見つけ出した本の中に、誰かの悪意によって破りとられたページがあると、その失われた部分の内容が妙に気になってしまうことがある。ある日、偶然歩いた都市の中でそれと似た感覚を経験した。それまで何の変哲もなかったと思われる住宅が、一瞬だけかいま見せた光景。ファサードが失われ、断面そのものがむき出しになった姿。そこに生まれた「欠如」と「残余」の対比。「欠如」という「地」により、「残余」という「図」が注意を引きつけるものとなったのである。さらにその「地」と「図」は反転可能性を含み、「欠如」部分を想像し補完することへと私の意識を向かわせていく。今回試みた行為は、この対比を含んだ光景をファサード(facade)=顔(face)を欠くトルソーとして再起し、「サモトラケのニケ」に匹敵する美的境地へと昇華させることであった。

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