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優秀賞

整頓工法

矢野 冬馬

文化財建造物保存技術協会

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例えば石があれば礎石とし、その中でも大きいものは構造とする。木があれば植栽とし、勝手の良いものは柱とする。また枝葉が張っていれば梁とし、屋根とする。小川が流れていれば少しだけ流れの向きを変えて、小さな池をつくる。その土地にある自然物をひとつずつ取り出し、少しだけ手を加えて、人のモデュールへと計画的に据え直す。文化財の修理にも似たその丁寧な過程を、整頓工法と呼んでみる。そしてこれだけでは人が生活できないので、それらの上に補助的な工作物をさっと付け足す。こんなつくり方をすれば、散漫な自然のモデュールは秩序ある木石の並びにかわり、水際はシンプルな幾何図形を描くだろう。またそこに架かる2枚のスラブの間では、樹皮や苔生す岩肌が白い天井、床、間仕切りに縁取られながら詩的に現れるだろう。そこでは自然、土木、建築の境界線上でお互いが干渉しあい、有機的に結ばれる。

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