研究報告要約

​在外研修

29-302

目的

川島 千枝

本研究の主な目的は、イタリアを中心としたヨーロッパの歴史的建造物が都市の中でパブリック~セミパブリック~プライベート空間としてどのように活用、再生(restoration)或いは保存されているか、また現代都市とどう関係しているかについて歴史的、社会的背景まで掘り下げ考察し新たな提案を思考する事で、現代日本に於ける建築・都市空間再生の可能性を探求するという事が目的であった。日本は、長い歴史の中で築き上げた数々の貴重な建築、芸術等の文化遺産で溢れている。しかし単体として成熟しているが、一方でそれらをつなぐ現代都市空間の魅力、豊かさには欠けているのではないかという疑問があった。それは建築物そのもの、それに付随する施設や街路、人等様々な機能を含む、時を刻み続ける都市空間である。守るべき文化と進化しうる文化の間で、人の暮らす場は豊かさを見失っているように見えた。それは間違いなく国家の社会システムも大きく影響している。また、近年の日本の人口減少によりできた多くの空き家、高度経済成長時に建設された多くの無計画な建築物。これらに対し新たな空間の活用にフォーカスし、異なる文化や歴史、気候、環境状況ではあるが、古い歴史を丁寧に積み重ね続けているヨーロッパの、デザイン手法や思想から、人の存在から、街から、学ぶ事が出来ると考えた。その際には、空間的特徴のみならず都市生活者のアクティビティにも注目すべきだと感じた。自身の経験として渡航前にランドスケープアーキテクトとして活動し、日本の実社会でプロジェクトに取り組み、人の出会う場に向き合ってきた。この社会経験や学生時代京都で生活し歴史的建築物等の文化財の魅力や抱える問題に触れた経験を生かす事ができるだろうと感じた。

内容

1.実例調査を含む設計プロジェクト ※( ):対象地、※*継続:前回の研修からの継続
a.ユネスコ世界遺産プラハ歴史地区内の旧ユダヤ人地区の内の一区域を対象とした美術館等複合文化施設及び周辺ランドスケープ空間の設計 (プラハ、チェコ)*継続
b.ユネスコ世界遺産エオリア諸島リパリ島の島全域を対象としたマスタープラン立案と廃工場跡地を活用した浴場施設等の設計 (リパリ、イタリア) *継続
c.軍事基地跡地を活用した集合住宅のマスタープラン及び14種類の外観デザイン手法を用いた 集合住宅ファサードの実験的デザイン - チノ・ズッキ教授主催による (グラーツ、オーストリア) *継続
d.ナポリ市中心地の集合住宅とその中庭を含むランドスケープ空間の設計(ナポリ、イタリア)
e.ドイツの彫刻家Fritz Koenigの所有したアトリエ兼住居、馬小屋を含む関連施設及びランドスケープ空間の改修計画(ランツフート、ドイツ)

2.実例調査としてのフィールドワーク
ローマの建築事務所“2A+P/A associates”でのインターンシップ経験報告(ローマ、イタリア)

3.都市・建築に関する歴史、理論等の調査分析
ミュンヘンの街区に於ける集合住宅の形態の変遷及びその住環境に関する調査 (ミュンヘン、ドイツ)

方法

本研修の課題について多角的に研究する為、実例に対する分析を行うと同時に様々なプロジェクトへの取り組みを通して考察する事とした。各プロジェクトはイタリアのみならずヨーロッパ各国とその周辺国を含め様々な国を対象とした。本研修期間に行なった具体的な研修内容は主に以下3つに分類して報告する事が出来る。

A.実例調査を含む設計プロジェクト
現代都市空間に於ける歴史的建築物の再生(restoration)や新たな活用方法の可能性、共存、建築・都市空間構成の方法等について、歴史的、社会的背景を考慮し考察、提案というプロセスで行なった。設計プロジェクトを進めるにあたり各プロジェクトの要項やコンセプト沿って、建築、ランドスケープ、都市、インテリアのような様々な手段を、必要に応じて柔軟に選択し設計していく方法で実施。

B.実例調査としてのフィールドワーク
学術的な環境下で実例調査を行うだけではなく、実際のプロジェクトに関わり実務を通してヨーロッパの実社会に於ける過程を探る為、設計事務所での実務経験を実施。

C.都市・建築に関する歴史、理論等の調査分析
都市の住環境について、ケーススタディを用いて都市の変遷を形態や歴史などを文献調査や作図、測量を行い多角的に調査。

結論・考察

昨年の研修では主に歴史的建造物とその周辺環境に関する保存、再生の手法についてイタリアと日本での思考プロセスの異なる点に注目した。本研修では、ミュンヘン工科大学での研修がメインとなり、イタリアとドイツの建築に対する思考、教育環境の異なる点等について学んだ事が大きかった。スタジオはミラノ工科大学と同様グローバルな環境で、ドイツではイギリス人とスイス人の教授の下でナポリのプロジェクトを行い、世界各国出身の学生と議論を交わし各地域の抱える問題や現状からその原因に対する分析や比較を行った。私の所属している大学は共に建築デザイン学科で、イタリアでは図面をベースに建築の空間を考え、自由で柔軟性の高い議論を行う傾向が見られた一方で、ドイツでは室内の空気感を設計する事が求められ細部にわたるまで模型表現を追求し、設計プロセスを一律システム化しスタジオ全体のデザインレベルを上げ質の高い議論を行うという極めて合理的な方法でプロジェクトが勧められた。
今秋には修士論文を本格的に開始する為、今夏より徐々に修士論文の為のリサーチを開始する予定である。修士論文のテーマは、イタリアで既に1年間行なった世界遺産のエオリア諸島の1つであるリパリ島を舞台とし、廃墟化した一部の区画(採石場関連施設、住居跡地を含む)の再生計画である。本プロジェクトは、エリアの再生に必要となるプログラム及び周辺の動線計画、ランドスケープ、建築群改修、新築計画、インテリアに至るまで提案する予定である。
6月には母校の教授より母校にて講義の機会を頂き学部2年生に向けて私の研究について紹介した。これは学生達の卒業後の進路について考えるというキャリアデザインに役に立ててもらう為講義であった。私の研究は残り半年となるが、3年間学んだ経験を機会があればまた未来を担う若い世代に伝えていきたい。

英文要約

研究題目

The study is about the methods of restoration and revitalization of historical architecture and urban regeneration - focusing on human activities in the city, its open spaces and exploring new designs for Japan

申請者(代表研究者)氏名・所属機関及び職名

Name: Chie Kawashima
Affiliation: Politecnico di Milano
Occupation: Student in Master of Science (Equivalent to Laurea Magistrale)

本文

The aim of my study was to explore methodologies of architecture in Europe, specifically in Italy, which require regenerative interventions while respecting site-specific cultural and historical context. The design of buildings was not the only consideration but also its relationship between the site and its surroundings. In my studying abroad period, I have been enrolled at Politecnico di Milano to acquire the Master Degree in Architectural Design as a necessary step for my career development. I also took advantage of my past work experiences. In order to complete the study in a multidimensional analysis, I partitioned the study into three phases. In these phases I worked on projects at sites in Italy and other countries in Europe and the world.
The first phase was about the analysis and restoration of historical sites, and about methods of coexistence of the new interventions with an existing urban fabric as a regenerative technique with a social consideration. These were done through projects at UNESCO World Heritage Sites such as the historic district of Prague, the Island of Lipari in the Aeolian Islands of Italy, Naples, and others.
In my second phase I got practical experiences in a professional environment. For that I did an internship at an architecture office in Roma. There I got to know the European architecture society outside of academia, and I learned about real-world projects.
In my last phase I studied the developments of the Munich city through its history. I studied related bibliographies, including historical maps and databases, and I re-drew the building plan and made a survey.
I learned a multitude of topics while enjoying discussions and fruitful experiences with both professors and colleagues of international backgrounds.

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